●44話
通された部屋は、思いもよらず綺麗な部屋で女性が一人、気だるげな雰囲気をたたえて、座っていたのだった。
「ノエル殿。新顔の仕込みをお願い。との奥の方様の言いつけでございます。
采配は任すと。」
といきなり話を振られてビックリするノエルだったが、史絵奈を認めて、うなずくと、ニッコリ笑って、
「分かりました。奥の方様にお伝えくださいませ。私と同室。の扱いでようございますか?」
一瞬探るような言葉尻に、首を傾げる史絵奈をよそに、
「霧の間にへ。とのお言葉でしたが。幼子の方は、奥の方様のお子様のお相手へとの事にございます。」
女中が答えると、納得がいったらしい。
「仕込みのお勤め。承知いたしました。」
手をついてノエルは、上品に軽く礼をする。
対してキニィーは彼女より、心持ち深めに礼をした所によると、彼女の方が身分が低いのだとわかる。
(なんだか、いろいろややこしいお国柄だよね・・。)
見た瞬間、ため息がでた。
「名前なんて言うの?私はノエル。よろしくね。」
キニィーが去ってしまうのを確認してから、いきなり彼女の方からサバけた言い方をしてこられて、ビックリする。
「わ・・・私はシエナって言います。この子はナビです。」
何とか答えると、彼女は小さく“シエナ”と“ナビ”ね。とつぶやくと、ニッコリ笑みを浮かべた。
「私、元々たいした身分の出じゃないから、仰々しいのは嫌いなの。霧の間の中では、敬語とかややこしいのは必要ないから。気軽に相談してね。
でも、“仕込み”を言い渡されているから、その点はしっかり学んでもらうわよ。
それで、あんた達はどこまで出来るの?」
「・・・・・。」
ノエルの質問に、答える言葉が見つからなかった。
「・・あの・・その・・私・・最近まで森に住んでいて、何もできないんです。すみません。何でもいいので教えてください。」
ガバッと伏礼の形を取って、史絵奈が言いつのると、横に立っていたナビも真似して伏せると、
「教えてください。」
と、たたみかけるのだった。
「ちょっとぉ~。あんた達。そこまで悲壮感漂わせなくてもいいから。普通に座ってよ。言ったでしょ?
私、仰々しいのは嫌いなのよ。」
「すみません。」
顔を上げて謝る史絵奈に、ノエルの小さくため息をつき、
「まあ、森に住んでたんなら、戸惑うのも確かよね。仕込みって言っても、たいした事じゃないから。
焦らず学んでいけばいいから。」
と、言ってくれたので、その時はホッとなって、
「ありがとうございます。」
と、素直に感謝の言葉を述べたのだった。