●41話
食事会の後、楓吾はあっという間に男達に連れ去られてしまった。
フラニーもいつの間にか、いなくなってしまっている。
「あなた方はこちらですよ。」
楓吾の後を追おうとした史絵奈とナビは、玄関の前でフラニーを出迎えた恰幅のいい女性に呼びとめられていた。
「?」
振り返る二人に、
「彼等と共に寝所を同じくできるのは、遊び女のみです。
兄上殿と離れてしまうのは、寂しいでしょうが、ここは堪えて・・。
この家で暮らすためには、御館様の妻であられる、奥の方様に面通りをしなければなりません。」
噛んで含めるように言ってくる彼女の瞳は、とても優しいものだった。
子供の時に、売られそうになって逃げる子供の話は、どこの世界でも憐れをさそうらしい。
史絵奈とナビがコクリとうなずくと、納得の笑みを浮かべて、付いて来いとばかりに歩き始めるのであった。
異世界に落ち込んで、初めて楓吾と別れる。
思った瞬間、とても不安に思った史絵奈の手を、ナビがソッと握ってくれる。
横を向くと、ナビの大きな瞳とぶち当たった。
「大丈夫だよ、カザミクンの能力は、ここの男達に負けないものだよ。
シエナだってやってゆける。」
無邪気な瞳で見つめられて、それが励みになった。
「・・・えぇ。私も頑張るわ。これ以上、風海君のお荷物になるなんてイヤだもの。」
史絵奈が答えると、ナビもうなずく。
「ナビも頑張るよ。二人のお荷物にはならないから・・。」
小さな体でうったえてくる様子は、けなげだった。
「一緒の部屋を割り当てられたらいいのにね。」
「一緒じゃないの?わざわざ別の部屋別割り当てる面倒な事するかなあ。」
首をかしげて言ってくるので、納得。
この家に雇われたのは、楓吾なのだ。
史絵奈とナビは、おまけ中のおまけなのである。
ヒソヒソ話ながら女性の後をついてゆく。
彼女はいったん主殿のようになっている屋敷を出た後は、庭を横切って、奥の屋敷に足を踏み入れた。
屋敷の中の雰囲気は、さっきの主殿のような屋敷と全く雰囲気の違ったものだった。
屋敷の大きさからして違ったのだ。
小ぶりな屋敷の扉は、開かれていた。
玄関先には何人もの女中らしき人達が立ち話をしていて、史絵奈達の姿を認めると、
「この子がそうなの?」
と、確認をしてくるのだ。
「えぇ、そう・・。奥の方様へ、取次ぎお願いできるかしら?」
「当然そのつもり、さあいらっしゃい。奥の方様が、お待ちかねよ。」
ニッコリ笑って
「じゃあ、お願いね。よろしく頼むわ。」
主殿から共にきた女性に言われて、史絵奈達は、奥の屋敷に入るようにいわれて、
「まあ、あなた達、裸足だったの?」
と、足元をチェックして言われてしまう。
「サンダルくらいはかせてあげればいいのに、ヘルザは、どこを見ているのかしら。」
主殿側の女中を非難したような口ぶりは、なんとなく“派閥”の匂いを感じさせる言葉だった。