いざ祝い膳        

●39話




 その後、フラニーに案内された場所は・・・。
 すでにたくさんの人が、待ちかまえていた。
 細長い食卓の上には、豪勢な料理が盛られていた。
 床に直に座った人達のほとんどは男性だ。
 それも、ほとんどが腕自慢で鳴らしているような、むくつけき男達だ。
 楓吾が、子供に見えてしまうくらい。
 彼等の格好は、フラニーに付き従っていた男達とよく似通っていた。が、彼等の方が少し、上位のようにも見える。
 貫頭衣のような上着を着ていた姿は清潔で、薄汚れていなかったし、色合いも綺麗なものだ。ズボンをはき、思い思いの毛皮を張りつかせていた。
 明らかに上座と分かる場所に、御館様が座っている。
 彼の横には空席がいくらか残っていた。
「どうぞ、こちらへ・・。」
 進められた場所は、御館様が座るテーブル席だった。
 そこでも様々な料理が盛られ、湯呑のような土で練られたコップがあちらこちら置いてある、
 中にはすでに濁った液体が注ぎ込まれていた。
「今日から我等の仲間になる、フィーゴ殿だ。フラニーを襲った夜盗は、数十人いたという。ほとんどが彼一人で対峙して、打ち負かし、フラニーを救ってくれた。
 恩礼の祝い膳だ。」
 史絵奈達が促されるままに席に着いた途端の、御館様のセリフだった。
 祝い膳に呼ばれた男共の、
「オォー。」
 と、感心したような野太い声が上がる。
「・・・ただ、事情があって剣術、体術もろもろを身につける事が出来なかった環境にあったと聞く。皆の者。よくしこんでやってくれ。
 乾杯!」
 言って、杯を高く上げて食事の挨拶とする礼は、一緒のようだった。
「乾杯!」
 男達も答えて、ゴクゴク飲みだしていった。
 楓吾も史絵奈も、促されてコップに注がれていたそれを口にして、想像通りに度のキツイ酒だったので、二人して顔をしかめて笑ってしまったのだった。
 マムルークの人達に紛れ込む作戦は、とりあえずは成功したようだった。





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