巫女姫の護衛達。        

●33話




 ・・・楓吾と史絵奈とナビが、小屋を離れたその翌日。
 白装束の軍団が、小屋の周囲を取り囲んでいた。
 彼等はうやうやしく一礼すると、ゆったりとした仕草で小屋の板をはずして、無人であるのを確認すると、絶句したようで動きが止まる。
 けれど次の瞬間には、すばやく振り返っていた。
「・・・遅かったか・・・剣の従者と契約を済まされた巫女姫様は、ご健在なはず。この地区一帯で出歩く男女一組を、徹底的に調べるんだ。」
「封呪の魔法が施されているよ。
 跡をたどる方法は、これからは用をなさない事になる。・・・なぜこんな方法をお取りになるんだろうな。」
 小屋の周囲をグルリと回っていた青年がポツリとつぶやくと、
「だから、徹底的に調べるんだよ。」
 隊の長らしき男性が怒鳴り返した。
「ミレーはガザレ地区。サントスはメナム地区。レビューは本部に戻って援隊を頼むよう申請してくれ。」
「・・・一体、どうゆう事なんだろう。」
 中がからっぽだった事の意味が、どうしても理解不能らしい。考えこんでしまった青年に、
「ミレー。聞こえなかったか?お前はガザレ地区だ。さっさと探しに行って来い!」
「ハイハイ。わかっていますって・・。けれど、巫女姫様が本気でお隠れになってるんだったら、俺達風情じゃ見つけだすことなんて、できやしないと思いますけどねぇ。」
 小さくつぶやく青年・・ミレーの言葉に、ピキピキッとみるみる青筋を立てた隊長が、
「ミレー。命令だ。」
 と小さく怒鳴ると慌ててマムルーク特有の礼・・立ったまま胸に手を当てる略礼をすると
「了解。タナトス隊長!」
 と素早く答え、共の者を従えると一目散にその場を去ってゆくのだった。
 他の補佐の者達も、速やかにそれぞれの任務に従って散ってゆく。
 ポツンと残されたタナトス隊長は、心残りな様子でもう一度グルグル小屋を回ってゆく。
「・・・カイ。捕獲した”ムルティン・アゲハ”は、変わりないな。」
 タナトス隊長のすぐそばに、控えるように立っていた小さな男に、ささやきかけると、
「御意。結界は強く、破られるような形跡は見られませぬ。」
 と小さく返してくる。
 それを聞いてホッとしたような顔をするも、すぐさま首を振って考え深げな顔をした。そして、肩を落としてため息をつく。
「とにかく我等はひとまず上層部に、報告しないといけないな。早馬を用意させよう。」
 つぶやく表情は、これ以上なく固い。





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