●27話
『私ナビちゃん。あなたのお名前は?』
と、問いかけてきた声は、とても可愛いい。
(これは正常に作動していないのもわかる・・。)
笑った後で、ガックリ肩を落とす史絵奈に、ナビは大きな瞳をクリクリ動かせて、微動だにしない。返事を待っているらしい。
仕方がないので、
「私は史絵奈。よろしくね。・・・地図を見たいのだけれど、どうやったら見れるか分かるかな?」
と、聞いてみると、案の定首をかしげて
「シエナだね。・・地図?」
と、天井を見上げるしぐさをするので、さらガックリくる。そんな史絵奈に、
「地図はねえ・・ちょっと待ってね。」
と言うと、彼女の瞳の色が変わった。様々な色が点滅して、まるで虹色の瞳だ。一瞬にして、元の黒い瞳に戻り、ナビは左手を上げた。
手の先に、ぼんやりと地図らしき映像が浮かんでいる。
「世界の地図がいい?それとも、地区限定?」
ナビの質問に、史絵奈はつい怒鳴ってしまった。
「世界の地図!」
「魔法を使うと、居場所が知れるよ。」
「え?何ですって?・・・見れないの?地図!」
つい小さな子供に向かって怒鳴ってしまった史絵奈に、ナビは首をかしげて、手をおろした。
すると、ぼんやり浮かんだ映像が、あっという間に消えてしまう。
「・・・えっとね・・結界を張れば大丈夫。かなあ・・。
二重に結界を張るの。そうすれば外からは分からない。」
と答えてくるので、ある疑問が浮かぶ。
「ナビは魔法じゃないの?」
聞くと、
「魔法じゃないよ。ナビは古き神に属するものだよ。シエナだってそうでしょ?
だから、ナビがいるんだよ。」
と、あっけらかんと答えるナビの正体が判明した。
「まず結界の魔法を張る方向でいい?」
聞いて来るのだが、悪い訳がない。
「お願いするわ。」
史絵奈が頼む仕草で手を合わせると、ナビはニッコリ笑った。
純粋無垢な笑顔だ。
「じゃあ、始めるね。少し時間がかかるけど、待ってて。」
言い置いて彼女は両手を広げて教室の中で出会った巫女姫のように指を組み合わせて、印を結ぶようなしぐさを始める。
無表情のままに、次々に指は結ぶ印が変わり、彼女の手の中に光がともる。
黄金色に輝くそれは、ふいに広がって、小屋全体を覆い尽くした。
キラキラ・・。と、金粉のようなものが、舞い降りてくる。
ア然と見つめる史絵奈を尻目に、ナビは納得がいったようで、コクリとうなずいた。
「・・・これで、完了!次は地図だね。」
言って彼女は再び手を挙げた。
あっという間に画像が現れる。
見た事のない地形。地区別に太い線で区切られていた。
とても見やすくて、おまけに日本語で記述してある。
「シエナがいるこの国は、マムルーク。
天の黄金律と、魔法が支配する国。」
「マムルーク?・・・どうゆう事?そんな国は聞いた事ないわよ。」
地図には間違いなくマムルークと言う国名のみ、巨大な範囲でくくられていた。
「異世界では、大きく分けて3つの大国と、数々の小国に分かれているんじゃないの?」
史絵奈の質問に、ナビは首を振る。
「ここは、スィニエークでもウィリデでも、ザフィーアでもないの、3国が出来るはるか昔に、世界を支配していた巨大帝国なの。」
言われてハッとなる。史絵奈の頭の中でかのんの姿が出てきたからだ。
「・・・かのんは?かのんはどこにいるの?この世界に飛ばされているんでしょ?」
その問いにも、彼女は切なげな顔をして、首を縦には振らなかった。
「・・・何てことなの・・。じゃあ、意味ないじゃない。私達がここにいる意味が・・。」
「史絵奈達が、巫女姫と出会ってしまったから・・・。」
「彼女のゆかりの国に引き込まれたってわけなのね。」
史絵奈のつぶやきに、コクリとうなずくナビなのだった。