サバイバルな日々        

●25話





 その日から彼は、ほぼ毎日獲物を捕えて来れるようになった。
 捕えてきた獲物の皮をはぎ、さばいた後は火であぶる。その肉の味は、素晴らしく旨かった。
 その一連の作業は、すべて楓吾がした。
 動物の死体はリアルで、さばくと言い張ったものの、手が震えてかえって危ない。と、カッターを取り上げられてしまったのだ。
 火を熾すにしても、種火はまともに上がらないし、小屋に来てからの史絵奈は、そこにいるだけで、何の役にもたたなかった。
 野菜を栽培しようと思っても、ほうれん草のような野菜で、とんでもない目にあった経験が、二の足を踏ませた。
 そんな史絵奈に、楓吾は一言も文句を言わなかった。
 幾日が過ぎ去り、楓吾の頬はこけて、精悍な顔立ちになって、余分な肉がとれたようだった。
 史絵奈はただやつれただけ。
 狩りで仕入れた肉が、圧倒的に足りないせいもあったが、そのわずかな肉が、楓吾と史絵奈の命をつないでいるのは確かだった。
 史絵奈は、せめて小屋の中を過ごしやすいように、草で束ねた即席の箒で埃をはらって、居心地のいい部屋を作ろうとした。
 獲物がうまく見つかった時は、彼は昼前にも帰ってくる。
 小屋に戻り、史絵奈の姿を認めた楓吾は、いつも満面の笑みを浮かべて見返してきた。史絵奈が戸惑うほどだった。
 そうやって、彼が側にいる時は、余計な事を考えずにすんだのだが、問題は彼のいない昼間の長い時間だった。
 史絵奈のする事と言えば、小屋の中を箒で掃いたり、焚き火の後始末をしたりするだけだ。
 あっという間に、用事はすんで、何もない小屋の中で過ごす時間は、辛すぎた。
 自然の中では、知恵も力もない者は、とても無力だ。考えないようにしていても、頭の中に浮かんでくる。
(私は、風海君のお荷物になっている・・・。私がいない方が、彼も自由に行動できるのに・・。)
 そうつぶやくたびに、目に入るのは、フォルダの形で浮かんでいる“それ”の存在だった。
(これを開けると、もう少し、私も役に立てるかな・・。)
 考えだしたら、止まらない。甘い蜜に群がるミツバチのように、フォルダから、視線を外せないのだった。
 そしてとうとう・・・。
 史絵奈はフォルダを展開してしまった。





back  top   next