火をおこす        

●24話



 小さな命は、楓吾と史絵奈に驚くほどのエネルギーをもたらしてくれた。
 飢餓感はあったものの、歩くこともできるようになったし、川に行って水を飲むと、なんとか一心地する。
 水で偽りの腹を満たすと、楓吾は木の皮を剝いで屑を作り、太めの枝と、細めの枝を切り取った。
 太い枝に切り込みを入れて、中に屑を中に入れて細い枝をクルクル回し始める。
 火を起こそうとしているのだ。
 ほどなくして、煙が立ちあがった。摩擦が摩擦を呼び、とうとう小さな火が上がったのだ。
「やったあー!」
 史絵奈が叫ぶと、楓吾も得心の笑みを浮かべ、集めておいた乾いた落ち葉を火にくべてゆく。
 小さな焚き火は、ほんのりと暖かく、史絵奈達の心にも小さな灯火をともした。
「これからも毎日、狩りに出かけて、何かしら採ってくるようにするから・・。」
 なんとかやっていこうな。
 小さなつぶやきにしか聞こえないそれを耳にして、史絵奈は顔が火照り出したのは、焚き火のせいだろうか。
 まるで将来を誓うかのようなセリフに聞こえてしまう自分に、カツを入れる。
「・・そんな。私だって、できる事をやっていくつもりだから・・今は何もできないけれど・・。」
 こちらこそよろしく。
 小さな声でささやく史絵奈を見つめる楓吾の表情は、とても優しい。
(そんな顔で、見ないでよ~。)
 心の叫びは楓吾には聞こえない。
 彼はニヤリ。と少しいじわるな笑みを浮かべて、
「焚き火ができたら、肉を焼くことができるから・・・これからは泣かずに食べることができるぞ。」
 泣きながら食べる喜佐は壮絶だったものな。
 楓吾の言葉に、史絵奈は拾った小石を、無言で投げつけたのだった。





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