●12話
「・・・喜佐、誓ってくれるか?もう自分から死ぬような行動を取らない。って。」
「え?。」
ひとしきりお互いの感情をぶつけ合うようにして、抱きあった後の、楓吾の一言だった。
間近で見る彼の表情は、懇願するかのように切実だ。
強い意志のこもった瞳はまるで・・。
(ちょっと。風海くん・・。それって、まるで“愛”の告白されているように、勘違いしてしまうよ、私。あんまり男子に免疫ないんだから・・。)
ましてや、彼に対する自分の気持ちに気付いた後の、史絵奈を気遣ってくれるセリフは、ドキドキさせてくれる。極めて心臓に悪かった。
楓吾の腕の中で、自ら妙な具合にとってしまって動揺する史絵奈に、彼は自笑気味な笑みを浮かべる。
「マジ、くどいようだけどよ。」
「うん。わかったよ。私、自分を大切にする。」
すぐにも宣言するように、元気よく返事した史絵奈の様子が、微笑ましかったのか、彼はクスクス笑って、
「頼んだぞ。古き神の血を受ける片割れよ。」
と答えてきて、ガックリときた。
(そうだよね。風海君も、私を好きだなんて、想ってくれるわけないわよね・・。)
楓吾は、史絵奈が共に運命共同体のように、同じ血を受ける者だから、死ぬな。と言いたかったのだと、理解した。
そう思うと、彼の腕の中で包まれているようにしてある自分の体に、ひどい違和感。
「あの・・風海くん・・。この体勢・・。」
懇願するようにして小さく訴える史絵奈の瞳に、楓吾はハッとなって、あわてて体を離す。
「ごめん・・。ついな・・。」
と、言い訳がましく、なぜだか彼の顔色が、赤くなっているように見えるのは、史絵奈の願望がみせる錯覚なのだろう。
「あのね。風海くん。私、一つ、分かった事があるの・・・とんでもない勘違いかも知れないけれど、聞いてくれない?
それと、相談したいことも・・。
そして、私の考えを、一緒にまとめて考えてくれると、とても嬉しいんだけど・・。」
史絵奈が言うと、彼の表情がサッと引き締まる。
「わかった。一体分かった事って、どうゆう事なんだ?」
促されて史絵奈は、口を開く。
「あのね・・教室の中に入ってきた女の人の事なんだけれど、あの人のセリフを聞いて分かった事があるんだ・・・。」
彼女の話は、相川かのんが異世界からやって来る元となった出来事の事と、繋がるものを感じさせてくれたからだ。
史絵奈は、彼には何もかも話してしまった方がいいと思った。
こんな風になってしまった“かのんとの経緯”を・・。