●3話
「どうしたの?」
史絵奈が駆け寄り、同じように机の中をのぞくと・・・。
何もなかった。
窓の外の暗闇とは全く違う。靄がかかったような、白い空間がそこに存在していた。
史絵奈は思わず自分の机の前まで駆け寄り、中を覗きこんでいた。
学校が終わった時のまま、記憶の通りに、ちゃんと入っている。
教科書やノートや、飴やガムなど・・。
「私の机の中は入っているよ。」
言うと、楓吾は少し眉を引き上げて、史絵奈の机に寄ってくる。そして、
「どれ・・・。」
と、小さくつぶやき、中を覗いた。
そのまま楓吾の動きが止まる。
「・・・どうしたの?」
首をかしげて問いかける史絵奈に、楓吾は何も答えない。
目を見はり、血の気を失った顔で、イヤイヤをするように顔を横に振った。そして、フラフラと自分の席までゆくと中をのぞく。そして得心した表情になって、
「喜佐、ちょっと来てくれ。」
と、手招きしてくる。
「俺の机の中も見てくれないか?」
言われてうなずき、彼の机の中を覗いてみて・・・。
白く靄がかかっていた。他のクラスメイトの机の中と、同じ状態だった。
「俺には、教科書やらノートやら、入っているのが見える。」
「それって、どうゆう・・。」
「俺達は、別々の景色を見ているらしい。」
かすれた声で呟いた楓吾の瞳は、元々こんな色をしていただろうか。群青色に染まっていて、史絵奈はゾクゾクと、寒気が走り出してきた。
(お互いに見える景色が違うなんて!)
それこそ、あり得ない現実だ。
「どっちの景色を信用すればいいの?」
自分と楓吾を見比べて、史絵奈は叫んでいた。